不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

謎を解け

 また記憶が薄れてきているので、再びまとめてざっくり感想を。この書き方になれると、ついつい安易な書き方へ流れてしまいそうになるので注意せねば。書くならきっちり書きたいし。何で苦しい思いをしてまで映画感想書いてんのかと自分で突っ込んでおくが。

 ゴーストライター』(監督/ロマン・ポランスキー、出演/ユアン・マクレガーピアース・ブロスナンオリヴィア・ウィリアムズ。動きが少なく無言でありながら雄弁なオープニングから、「ゴースト」に初めて肉体が宿る余韻溢れるエンディングに至るまで、曇天模様の下で繰り広げられた極上のサスペンス。ポリティカルサスペンスとしてはやや弱いし、Googleが万能すぎたり、カーナビであんな事は起きないのではと突っ込みを入れたくなったりもするが、政治的社会的メッセージを排してエンターテインメントに徹していたのはよかった。何より回想を使わずに、あくまで現在進行形で物語を綴っていく手腕は見事なもの。演技の面でもどこか虚ろなマクレガー、空虚なブロスナン、おぼろげなウィリアムズなど、まるで実体がどこかにあるかのような人々を巧みに演じていて、よかった。
 おそらく監督が頭に浮かんだイメージは完全に具現化されていて隙が全くないわけだが、それが不満といえば不満で、ふとした瞬間の逸脱――物語においても演技においても――がないところにグルーブが生まれるわけもなく、スッと旅立ってストンと帰って来る。スマートであるけれどトラブルがない人生はつまんないよねと、ここまでの一級品に言うのは酷すぎるかもしれないけどね。