不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

エレカシ作品感想「日本のロックバンド登場」

 月末の野音に向け、エレファントカシマシのアルバムを聴き直しているので、この際だから全アルバムの感想を書いていこうと思い立つ。途中でやめるかもしれないけど。何も考えず、聴いたままの感想。
 というわけで、デビュー作『THE ELEPHANT KASHIMASHI』である。88年の作品だから21年前の音。ヘナヘナな演奏だし、とても巧いとは言い難い、歌うというより叫ぶような宮本浩次の歌。それらを補うのではなく、さらに増幅させる若さとエネルギー。
 2作目以降、バンドの理想と現実にさいなまれ、挫折と屈辱を味わい、怒りや嘆き、憔悴、希望といった内面世界を描き、独特の美しくも屈折した世界を広げていき、それがエレカシの音楽になっていくわけだが、デビュー作にはそれがない。このアルバムには若さと自信が漲っている。宮本自身、インタビューで《60点ぐらい》と言いつつ《革命的だとは思います》と言っているくらい。不敵な21歳、たまんねぇな。 
 ロックド真ん中“ファイティングマン”、これがデビューシングルかよ“デーデ”、天皇の歌?“星の砂”、壮絶“BLUE DAYS”、怒り大爆発“花男”など、いまでも歌われる代表曲がここにある。これらを演奏する時のバンドの輝きは、すさまじい。全曲、日本語がはっきりと聴こえてくるのだが、当時はどう思われていたのだろう。《ここはまさに地獄絵図》なんてサビの歌詞は、古今東西これくらいじゃないか。
 基本的に「怒り」を歌っているが、単にぶちまけているわけではない。根底にあるのは、今と同じ「自信がなくなったって、こんな世の中だって、ドーンと行こうぜ!」という開き直り、楽観にも似た力強い信念がある。いまでもそれは変わっていない。
 俺がこのアルバムでもっともグッとくるのは、アルバムジャケットで、一人だけ目線を外すミヤジ。「俺はまっすぐ見ないよ。言うことなんか聞かないよ」とふてくされた顔をしておきながら、一曲目でいきなり聴こえてくるのが《黒いバラとりはらい 白い風流しこむ》《自信をすべて失っても 誰かがお前を待ってる》だもん。たまらんっすよ、ほんと。

エレファント カシマシ

エレファント カシマシ