『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を見た。総監督・原作・脚本、庵野秀明。キャラクターデザイン、貞本義行。声の出演、緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、山寺宏一、石田彰、立木文彦、清川元夢、長沢美樹。子安武人、結城比呂、関智一、岩永哲哉、岩男潤子、麦人。
俺は「エヴァンゲリオン」に何の思い入れもない。ファンでもない。テレビ版は、深夜放送されたものをビデオ録画し、一気に見た。映像演出は大好きだが、内容はうっとうしくて「面倒だから全員死ねばいい」くらいに思っていたものだ。それから映画も劇場で見た。まぁ一応区切りがついたんだなぁと勝手に納得していた。
先日、『序』をDVDで、エヴァファンのkjの解説と共に見た。細部の差異には俺は全く気付かず、映像のクオリティにはドキドキしたが、物語が二時間に凝縮しているのでタメがなく、早急すぎて、とてもおもしろいとは言えなかった。が、『破』は元の道から全く外れているというので、見に行ってみたのだ。
正直、驚いた。初めて「エヴァンゲリオン」をおもしろいと思った。映像のクオリティもずば抜けており、ギュンギュン動く機械やエヴァに胸躍った。極上快楽のエンターテインメント。こりゃすごい。
登場人物の前向きっぷりにも驚いた。綾波レイのあのセリフを間髪いれずに否定し手を差し伸べた碇シンジの熱血っぷりにはオジサン、不覚にも感動してしまったよ。何が起きたんだろう。というか、それがメインテーマか。ループ説とかあるんでしょ? まぁその辺の解読、考察は他でしているのでしません。個人的にお気に入りだったアスカがあんな目にあってショボンとしたが、予告に出てきたのでよかったです。一番のお気に入りは、最後の最後に槍で突き刺した上に「しあわせにするよ」とかほざくガチホモ少年。あそこで大笑いしてしまった。劇場のみなさん、すみません。
いろいろと思うところ、感じ入るところある。相変わらず思わせぶりなセリフばかりで、この辺がファンの本能をくすぐり、何年か後に来る『Q』までの餌にしているんだろうなぁ。俺も『Q』を楽しみしている。
と、しかししかし、上記の感想は俺が「部外者」だからこんな風になったのかもしれない。インタビューなどは一切読んでいないので、思いっきり俺の偏見気味の考えのみを書かせていただく。
思うに、「エヴァ」とは庵野秀明の私小説だった。幸か不幸かそれが(一部)大衆に受け入れられたが、だからといってそれを庵野が望んでいたわけではないのだ。ここの歪みが、何よりの始まりである。
両者に信頼関係はなく、昨今のプロレスにもないほどの緊張感と遺恨が渦巻いていた。そして、旧劇場版で庵野は思いっきり観客を裏切り、くそをぶっかけた、らしい。俺は「区切り」で決着をつけたとすっきりしていたので、そこんところはわからん。が、信頼関係のなさ、発信側と受信側の異常なまでの緊迫感が「エヴァンゲリオン」だったのは確かだ。
そうなると、『新劇場版』での前向き、肯定、熱血、成長っぷりにはファンであればあるほど驚いたことだろう。戸惑いだけでなく、怒号が飛び、悲鳴が響き、同時に感動の渦が巻き起こるという異常な事態になってしまったことは、容易に理解できる。
「エヴァンゲリオン」とは庵野と観客の10年以上をかけた戦争なのである。
最後の手は当然、庵野が握っているわけであるが、それは12年前の裏切りの再現なのか、それとも新たなステージへ突入するのか。そこは、当たり前だがわからん。なんにせよ、完結版という最終決戦では、これまで以上の戦いが予想される。その先に、信頼関係が生まれるのか。庵野が手を差し伸べるのか。ポカポカするのか。それとも、さらなる裏切り、超展開があるのか。
十何年もかけてようやるわ。そんな作品、古今東西見当たらない。斬新だ。これを見ない手はないだろう。言っちゃあなんだが、完全な「部外者」である俺は、その戦争が楽しみなのだ。無責任かつ上から目線で書かせていただくが、大いに騒げ、大いに戦え。骨は拾ってやるぞ。
心の底から、『Q』が楽しみです。