ジョージ・オーウェル『一九八四年[新訳版]』を読んだ。なかなかおもしろかった。絶望的な気分にさせられて、恐怖でいっぱい。こんな未来なんか来るわけがない、と鼻で笑えない現実にまた恐怖。
「ノンフィクションは嘘を書き、フィクションは真実を書く」という言葉がある。*1たとえば全体主義を書くのにソ連という現実の国のノンフィクションを書くとする。しかし、どうしたって全ては書ききれないし、人の目が入る以上、「編集」されるから、「事実」を積み重ねても「真実」ではないのだ。
一方、フィクションは虚構を書く。虚構だからこそ、そこに含まれる「真実」は「真実」でしかない。
突っ込みどころのある極論だが、納得はできる。この『一九八四年』も、フィクションだからこそ書けた、純たる「真実」がある。重くて、暗い、絶望のような「真実」だけど。
村上春樹をこれを土台にして『1Q84』を書いた。起こり得るかもしれない近未来を描いた『一九八四年』と、起こり得たかもしれない近過去を描いた『1Q84』。どちらも全体主義、神、暴力、正義、愛という「神話」に対抗する「物語」だったのだ。ふむ、こうして見ると『1Q84』を違った角度で読めるかもしれん。読み直す気はいまのところないけど。
- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
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*1:ないかもしれん。最近読んだ本にあったと思ったが、探しても出てこない。俺の脳内派生か。