不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

手を出すなら一人にしろ


 PFFにて『白い肌の異常な夜』を見た。監督、ドン・シーゲル。出演、クリント・イーストウッド。原題は「The Beguiled」(欺かれた者)で、なんじゃこの邦題と思ったが、見終わった後は納得してしまった。珍味な一品。女の園に男一匹、モッテモテやで! と調子に乗ったらどえらい目に遭った、という作品。エロゲから昼メロ展開。エロゲのバッドエンドってこんな感じか?
 主人公が足を負傷して自由に動けない設定で、動きが少ないので退屈かと思いきや、巧みな演出で男の心情を表わし、こちらをやきもきさせる。松葉杖を突く「ドン」という音一つも効果的。エロゲ状態の中盤まで、視線一つ、しぐさ一つが伏線となり、以降の昼メロ部分で存分に映画的に機能する。見事すぎてうなりっぱなし。南北戦争という時代設定も、見事に昇華されている。うーむ。
 女性の心理描写はやや浅いものの、秘められた性欲と独占欲、そして情念はむんむん匂ってきて、とにかく「女ってこえー……」と呟かずにはいられない。女に年齢は関係ないんだな、とも思った。こわいなぁ。
 ちなみに、ドン・シーゲルはこの映画を自身の最高傑作としているらしい。うーむ、なるほど……。
 『白い肌の異常な夜:ストーリーテラー』という、イーストウッド初監督作品も同時上映された。撮影現場でのドン・シーゲルの演出術を記録したドキュメンタリー。イーストウッドがカメラ目線で語りかけ、いささか胡散臭さが漂うものの、中身は興味深い。たった12分しかないのがなぁ。