不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

がんばれ、ルーザー


 サンシャイン・クリーニングを見た。監督、クリスティン・ジェフズ。出演、エイミー・アダムスエミリー・ブラントアラン・アーキン
 負け犬、駄目人間の生きざまを温かい目で描きだすヒューマン・コメディなのだが、うーん、惜しい仕上がり。五ツ星で言うと、三ツ星って感じ。コメディ的にもヒューマンドラマ的にも針が動くのだが、その振れ幅はとても小さい。
 事故や事件現場になり血や体液で汚れた部屋、家の後始末をする特殊なクリーナーを職業にした姉妹の物語。そういった特殊な仕事の現場で起こるドタバタ劇を期待していたが、それはあくまで一要素でそれほど重要ではなかった。勝手な期待ではあるが、少し肩すかしをくらった気分。
 中心となるのは、いわゆる「駄目」な人間たちの物語だ。かつて栄光にいたのに転げ落ちた者、何をやっても失敗する者、懲りずに同じ事を繰り返す者、報われぬ恋をする者……彼女らは彼女らなりに幸せを願い、目標を定め、努力して前進している。だけど、やっぱり「駄目」でうまくいかない。
 エイミー・アダムスエミリー・ブラントの姉妹の組み合わせがピッタリでいい。お互い演技がしっくりしており、魅力的。負け犬役が魅力的という言い方が合っているかどうかわからんが。個人的ヒットは父親役のアラン・アーキン。いかがわしい投資を繰り返し、娘たちを温かく見守っているようで、全然見ていなかったり、でもやっぱり助けたりする、駄目親父を好演していた。この親父はなかなかの食わせ者で、見終わったあと「親父の一人勝ち」という印象が残っていたほどだ。
 何が惜しいって、メインもサブも、どの話も思わせぶりで終わっているところだ。結末を観客に委ねるのはいいとしても、どれも淡白であっさりし過ぎている。それはそれで現実味があり、彼女たちを等身大に描き出しているのだが、「物語」としてはあまりにも物足りない。描きたい事はわかるのだが、描き切れていないのだ。何も明快な解決や結論が欲しいのではない。ドラマチックな展開を期待していたわけでもない。ただ、もう一歩踏み込んで欲しかった。その「もう一歩」がどこに行くにせよ、だ。
 過去を捨てる事はできない。輝いていても、汚れていても、痛々しくても、とにかく抱える事しかできない。彼女たちが「抱える」決意をして、再び前進しようとするラストの姿は、ポジティブで、笑顔がステキだった。
 と同時に、実は彼女たちがまだ一歩も踏み出していない事を描いてもいた。「最後に王子様が出てきて、メデタシメデタシ」にはならない。また同じ「駄目」の繰り返しかもしれない。同じじゃなくて、螺旋階段みたいに少しずつ上にあがっているのかもしれない。それは、また別の話。
 苦さと前向きさが絶妙なバランスで宿っていて、味わいある作品だったが、深さがない。ちと残念。