「椎名林檎 生 林檎博’08〜10周年記念祭〜」へ行く。ハコはさいたまスーパーアリーナ。『By The Way』のツアーで来たレッチリ以来なので5、6年振り。周りが随分開発された印象を受ける。
ステージの前にオーケストラが配置されている。通常、ロックのライブでオーケストラが入る場合は舞台裏にいるもんだが、と不思議に思っていたが始まって合点がいった。ほぼ全ての楽曲がオーケストラアレンジされているのだ。オーケストラがメインとなっているので、バンドメンバーもコンダクターの指揮に従う。そのぶん“遊び”がないが、完成度は高かった。特に、曲と曲のつなぎ部分のアレンジが絶妙。
ただ、ライブ自体はどうだったかというと、いささか消化不良。
タイトルにある通り、デビュー10周年記念ライブなので、軸がなくて新旧様々な楽曲をやる。それはいいのだが、「祭り」というわりには祝祭空間にはなっていなかった。林檎を切るパフォーマンスがあったり、盆踊りをしたり、兄とのデュエットなど、いろいろとあるのだが、どれもはじけ切れていなかったように見えた。
かつて『ロッキング・オン・ジャパン』で、『無罪モラトリアム』を「パンク」であると評した。そして、「椎名林檎」も「パンク」であると。俺も、同感である。
「パンク」とは「刹那」である。椎名林檎が真に「椎名林檎」であった刹那は『無罪モラトリアム』だけだった。幸か不幸か、彼女は生きながらえ、様々な現象やファンを抱え肥大化していった(それでも十分クオリティは高かったが)。それに嫌気がさしたからバンドを組んで、新たな進化をしていった。というのが俺の解釈である。
それを凝縮させ、祝祭空間にするのは、そもそも無理だったんじゃないのかな。
それに加え、デンと陣取ったオーケストラが、椎名林檎とオーディエンスとの距離や壁を、物理的にも精神的にも作ってしまっていた。気持ちが遠い。
曲によってステージの雰囲気が全然違っていて、アイデアもたくさん盛り込まれていた。その場の空気をつかむ椎名林檎のパフォーマンスもおみごと。前に書いた通り、アレンジもよかった(全曲オーケストラアレンジというのはやり過ぎだと思うが)。
これだけのクオリティだからこそ、もっとガッツンガッツン、バキバキのライブが見たかった。アルバムツアーの時はそうなのかな?
楽しかったけどね、椎名林檎ってこんなもんじゃないんじゃないの? と思うライブだった。
《あたしは君のメロディーやその
哲学や言葉 全てを守り通します
君が其処に生きてるという真実だけで 幸福なのです》
(“幸福論”)
set list
01.ハツコイ娼婦
02.シドと白昼夢
03.ここでキスして
04.本能
05.ギャンブル
(デビューからの流れを映像で振り返る BGM:葬列)
06.ギブス
07.闇に降る雨
08.すべりだい
09.浴室
10.錯乱
11.罪と罰
12.歌舞伎町の女王
13.ブラックアウト
14.茎
15.積木遊び
(息子による、椎名林檎の生い立ち)
16.この世の限り(with 椎名純平)
17.The Onion Song(with 椎名純平/Marvin Gayeのコピー)
18.夢のあと
19.御祭騒ぎ
20.カリソメ乙女 DEATH JAZZ
en.01
01.正しい街
02.幸福論(悦楽編)
en.02
01.みかんの皮(7歳の時に作った処女作)
02.(新曲?)
endroll
00.丸ノ内サディスティック