不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

人生の鑑としてのプロレス

 斎藤文彦『みんなのプロレス』読了。『週プロ』連載コラム「ボーイズはボーイズ」をまとめたもの。557ページと分厚いが、ひとつひとつは短めで、どこからも読める。そして、その文章は平淡のようであたたかさがあり、ぐっとくる。どれもおもしろいが、アメリカの事情は特に興味深い。だけど、クリス・ベンワーのあの事件については、読むのがちとつらかった。
 試合ではなく、レスラーの人間的な面、サイドストーリーが描かれている。リング下にいるレスラーはどんな存在なのか、そこからプロレスを見ていく。
 序文の冒頭はこんな感じだ。

 プロレスが大好きで、プロレスと一緒に長い時間を過ごしていると、身の周りで起こるありとあらゆる出来事が“プロレス”になってくる。プロレスは勝ち負けを争う試合の形をしているけれど、勝敗だけを競うものではない。(略)小さな“勝ち負け”は日常生活の中で毎日のように起きることだから、昨日今日の勝った負けたで一喜一憂しない方がいい。それでもどうにもならない時には両者リングアウトとか時間切れドローとか様々な決着の付け方を選択することが出来る。プロレスは僕たちにそういうことを教えてくれる。

 レスラーを通しプロレスを見つめ、人生を見つめる。俺は大体の物事をプロレスから学んだなぁ。
 これを読んだ後、初読時は全くピンとこなかった『私、プロレスの味方です』が、突如おもしろくてたまらなくなった。

みんなのプロレス

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