矢野誠一『戸板康二の歳月』読了。最初は遅々と読み進まなかったが、中盤過ぎから遅いままだが、惹きこまれていった。平坦に、淡々と書いているように読めたが、だからこそ《いよいよ戸板康二の大患について書かねばならない》と深刻な話になった時の感情のゆれがよくわかった。
戸板康二という人物の評伝でありながら、東京人の気質、歌舞伎、俳句など通で粋な文化の誘いにもなっている。
興味深かったのは福田恆存の確執。俺は坪内祐三を通しての福田恆存しか知らなかったので、戸板康二(というより矢野誠一か)から見た福田恆存の、粘着質で、嫉妬深い、いや〜な姿がおもしろかった。こうも違うものなのか。どちらも福田恆存なのだろう。
そして、やっぱり戸板康二が読みたくなった。まずは『団十郎切腹事件』かな。
- 作者: 矢野誠一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/09/10
- メディア: 文庫
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