不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

モノトーン幻想文学

 ディノ・ブッツァーティ『神を見た犬』読了。いいとよく聞くので読んでみたが、おもしろかった。何の知識もなかったので、もっと「純文学」なのかと思ったが、「幻想文学」だった。奇抜なアイデア、巧みなプロットを視覚的な文章で描いていく。無駄のない、計算された職人技の構成ばかりで、極上の短編小説だった。
 日常の非日常を描くのではなく、非日常の日常を描いており、その当たり前さが、おかしい。基本的に恐怖や失望、哀しさが描かれているが、読んでいる側が哀しくなる事はない。むしろ、滑稽な人間の姿にニヤリとしてしまう。その滑稽な姿が、己の姿である事は読み終わってから知る。
 個人的には「コロンブレ」「聖人たち」「神を見た犬」「護送大隊襲撃」がお気に入り。

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)