不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

こいつのケツに、そいつのアタマをぶち込む


 『ハンコック』鑑賞。監督、ピーター・バーグ。出演、ウィル・スミス、シャーリーズ・セロンジェイソン・ベイトマンエディ・マーサン、ジェイ・ヘッド、トーマス・レノン、ジョニー・ガレッキ、ダエグ・フェアーク。
 空を飛び、超人的な力を持つスーパーヒーローが主人公。凄い力を持っているけど人間性に問題があり、酒ばかり飲み、人々を助けるんだけど被害は甚大、態度も悪いので、みんなから嫌われている。凄まじい力を持ったスーパーヒーローが一般社会にどうなじむか、どう折り合いをつけるのか、というのはヒーローものでよくあるテーマ。さらにそこをコメディ化するのもよくある。が、訴訟にまで発展し、刑務所に入るヒーローというのはあまりないだろうな。
 前半のハンコックの数々の暴走は笑える。どう見てもやり過ぎ。ふとした事で知り合ったPRマンとの改善作戦もなかなかいい。「警官にグッジョブと言おう」「着地は道路を壊さないようにやわらかく」「笑顔を」などの具体的な指示は、近いアメリカ大統領選挙を考えると、皮肉めいていてニヤリとする。スーパーヒーローにも広報がつく世の中かよ。
 コメディ的展開には小ネタが多く、使い方もうまい。やさぐれヒーローと冴えないPRマンが協力しあう展開はスポコンみたいで笑えるし、その成果を見せる事件では「失敗すんなよ〜」とこちらも思いながら見る事が出来た。
 ただ、後半がまずい。途中で意外な事が明らかになるのだが、それは結構などんでん返しで悪くない。だけど、細部がつめきれていない。つめきれていない、矛盾が多いどころか、何がなんだかさっぱりわからんのだ。
 まぁ広げた風呂敷はでかいです、畳めないので畳みません! とでも言いきるほど説明を放棄していたので、それはそれですがすがしく楽しむ事が出来た。しかし、クライマックスはぐだぐだすぎ。戦うラスボスがいない(弱い)からか、盛り上がらない。音楽と演出で何とか場を持たせたけど、あれはちとひどいぞ。
 ヒーローをリアルに描く映画はいくつか公開された。その中でも、ある意味でもっとも現実的で、もっともコメディに向いている作品だ。ウィル・スミスのふてくされっぷりはよかったし、シャーリーズ・セロンの美しさにはクラクラした。本当に美人だな、この人。美人というよりも、カッコよい。男の俺でも憧れるほどだ。前半のコメディ部分は質が高いし、俳優はいい。だから非常にもったいない気がする。もっと徹底したコメディを見てみたかったな。あ、あと、ハンコックが空を飛ぶシーンは、えらく陳腐な映像だったのだが、あれは何故だろう。予算切れ? カメラワークもちぐはぐだった。
 それにしても、命を助けられたのに「建物が壊された」とか「やり方が乱暴だ」とかのたまう一般市民はなんだろう。確かにハンコックはいつもやり過ぎているから抗議するのはわかるけど、市民の喚く姿を見ていると、人間のある種の欲深さが見えて、少しぞっとした。