不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

蒼井優に百万点


 百万円と苦虫女鑑賞。監督・脚本、タナダユキ。出演、蒼井優森山未來齋藤隆成ピエール瀧竹財輝之助笹野高史キムラ緑子矢島健一佐々木すみ江
 タナダ作品の持ち味はリアルと、リアルでない部分のバランスだ。日常の中にひょっこり顔を出す非日常(またはその反対)。そこに笑いや哀しさ、美しさが生まれてくる。
 が、本作に限って言うと、バランスがおかしい。“無理やり”の日常と非日常なのだ。とってつけたような登場人物ばかりだし、発生する出来事もステレオタイプというか、よく見かけるものばかり。笑い部分も、微妙だ。もっとテンポよく、蒼井優演じる鈴子があちこちを転々としていく話かと思ったら、そんなに移動しないのも拍子抜け。最後のは俺の勝手な期待ではあるが、なんとも白々しい世界観。
 ほとんど全ての話の先が見えてしまい、「なんだかな」と思うのだが、中でも終盤の展開はひどい。
 鈴子が様々な人に会い、様々な仕事をして経験したものは、結局、無駄だったと言いたいのか? 
 ある“真相”を当事者でも何でもない人間に語らせてしまっては、何の結論にもたどり着かないではないか(だからこそ、あの結末になるのかもしれないけど)。
 2時間かけて描いたものは、何だったのか? 理屈づけて説明してほしいわけではない。感情や感性、イメージで楽しむ映画なのはわかるが、楽しむ前の段階でつまづいている。
 ただ! はっきり言わせていただければ! 蒼井優の前では! 何もかもがノー問題! ノーったらノー!!
 いや、ちょっと冷静に見ても、やはり蒼井優の存在感は凄かった。ファンのひいき目でなく。「そこにいる」という演技ができていて、スクリーンにいるかいないかで、映画の輪郭が全然違う。
 しかし、だからといって監督が欲を出したのか、「蒼井優ファンのための蒼井優が出ている蒼井優の映画」となってしまっているのが駄目。主人公ばかりをクローズアップしてしまい、脇役が全然生きていない。そのせいで、他の人物も物語も「作り物」という印象を拭えなかったのかもしれない。
(以下ネタバレ) 
 見どころは一つだけ。鈴子と、森山未来演じる亮平との告白シーン。亮平に誰にも話した事がないことを話してしまい、よくわからない怒りにかられる鈴子。どうしたらいいのか戸惑う亮平。そして思わず言っちゃう亮平。答える鈴子。手に持っている買い物袋のやり取りが他の部分とは違い、ちゃんとした笑いになっていて、あの場面だけはよかった。
 そして、蒼井優の告白の仕方が、とんでもなくカワイかった。あんなにカワイくて、それでいて男前だからステキ。
 というわけで、映画は中途半端だが、蒼井優はよかったです。以上、解散!