不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

不満足な261本を抱え

 NHKETV特集 マキノ雅弘 生誕百年 あるカツドウ屋の生涯」を見る。マキノ雅彦津川雅彦)が『次郎長三国志』をリメイクしたのに合わせてだろうが、こういう番組やるからNHKはえらい。受信料も払ってやろうじゃないか。
 正直、マキノ雅弘はほとんど知らない監督だ。作品も名前は知っていても見ていない。261本の映画と、その人生、その一家。波乱万丈、というのは陳腐だけどまさにそれ。抜群におもしろい。最後の20年間は、「任侠監督」と決めつけられて何も撮れなかった、撮らせてもらえなかった。なんて勿体ないんだろうなぁ。
 最後に公の場に姿を見せた時の言葉に、胸が震える。*1
「261本、何一つ満足した事がない。しかし、喜ばれた事がある」
「死にきれん! 人様に頭を下げて家の前を撮影させてもらい、時にはやくざに殴られて、それでもカメラは大事に守ってきた。何でこんな目に合わないといけないんだと思っていた。
 今になって、やっとわかった。映画生活80年、ずっと夢を見てきたんだなと」
「おもしろい、いいなと思ったら口々に喧伝してください」
「映画を見てやると、約束してくれませんか。日本映画を見るのだと」
 涙を浮かべながら前のめりでそう語るマキノ雅弘。いかん、いかんぞ俺。マキノ雅弘見ないと。映画を見ないと、日本映画を見ないと。映画が好きなら、もっと見ないといかんなぁ。
 番組は、おそらくマキノ自身の字で書かれた文字が出て終わった(自伝の最後の言葉らしい)。

まだ足りぬ、映えて画いて、あの世まで

*1:急遽メモをとったので、細部は違うかもしれない。