角田光代『何も持たず存在するということ』読了。いろいろな媒体に書いたエッセイをまとめたもの。とっちらかっているかと思ったら、一本筋の通ったものが根底にあった。誰でも使う何気ない言葉で、こんなに胸に染みる文章を書けるから凄い。存在というよりも不在についてのエッセイが多かった。中でも父親についてや、直木賞受賞の言葉に出てくる母への思いがグッとくる。
いないって、いなくなるってどういう事なんだろう。
読んでいて、正直ちょっと涙が出そうになったところもあった。
私はきっと、父がどんな男だったのか知らないままだろう。それは彼がもういないからではなくて、だれかと関わるということはそういうことなんじゃないかと思うのだ。知り得ない人を、その存在も不在もまるごと引き受けることなのではないかと思うのだ。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 幻戯書房
- 発売日: 2008/06
- メディア: 単行本
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