山本伊吾『夏彦の影法師―手帳50冊の置土産』読了。
第三者が書いた伝記などは好きなのだが、遺族の回想記というのは、あまり読まない。内面を知っている人間なのだから、外から見えないその人の顔を書いているのは興味深いが、それ以上に、何と言えばいいのか、感情のベタつきが気になってしまうのだ。
しかし、この本は違った。山本夏彦の実の子である著者は、狂言回しに徹している。山本夏彦が残したメモ(日記)を「編集」「説明」、時々「つっこみ」ながら、“夏彦の影法師”を描いていく。私情を添え物にしていて、ベタついておらず、だからこそ最後の父親との対話部分は、グッと来る。
山本夏彦はちゃんと読んだ事がないが、立ち読みしたり本書に引用されたものを読む限り、あまり合わなそう。ともかく、そんな俺だから、これが山本夏彦の“素顔”なのかどうか、意外なのかどうかはわからない。随分偏屈なジジイがいたんだな、というのが正直な感想。ちゃんと一回読んでみたいが、もしかしたらこれが一番合う本かもしれない、とふと思った。
- 作者: 山本伊吾
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/09/28
- メディア: 文庫
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