星野博美『迷子の自由』読了。寡作な人だけに、こんなに早く新刊が出るとは思わなかった。嬉しい。
東京、インド、重慶を巡るエッセイ集。一回が2ページの文章と見開きの写真。文章がうまいわけじゃないので、一気に読むと途中飽きてしまう時があるが、相変わらず独特のスタンスと視点がいい。
デジタルカメラはデータを消せる事について(「写真」)。
デジタルの世界は私たちの目の前に、「消しますか? あなたが望むならなかったことにできますよ」という禁断の選択を提示する。消せるものなら、私だって消したい。しかし一度消してしまったら、もう二度とあと戻りできなくなるような気がする。
忘れたくないから撮り、忘れるために消す。人間はずいぶん手のこんだ道具を手にしてしまったものだ。
「消去が簡単にできる」世の中だからこそ、「撮る」という行為の恐ろしさ。
この本では特に写真が心地よい。とても幸せそうな写真なのに、どこか切ない。《写真を撮るとは一瞬を切り取ることである》と著者は言う。写真は「一瞬を永遠にする」。しかし、彼女の言葉を読み、写真を見ていると「永遠を一瞬にもする」ような気がした。
- 作者: 星野博美
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2007/02
- メディア: 単行本
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- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
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