フランツ・カフカ『変身』読了。
中学くらいに読んだ記憶があったが、改めて読んでみたら全然記憶と違っていた。記憶の結末は、ドアを開けたら家族も「虫」だった、というもの。これは一体、何の本の結末なんだ?
冒頭のシーンはいつ読んでも鮮烈だが、面白いのはグレーゴル・ザムザが自分が「虫」になった事を疑問に思っていない事だ。なっちゃったのは置いておいて、会社に遅れそうだと思うのは、端から見ていておかしい。家族も、嘆き悲しむ割には「何故、虫になったのか?」と誰も疑問に思わない。描写も、どこか突き放したような文章だ。
虫となったグレーゴルは、そのうち家族の厄介者となり、最後はひからびて死んでいく。一家はホッと安心して、久し振りに遠出をする。あたかも“生まれ変わった”かのように。そう、「変身」とは、グレーゴルの「変身」だけではなく、家族の「変身」の意味もあるのだ。
そして、この「虫」になる、というのは“本当に「虫」になる”のではなく、あらゆる状況に置き換え可能なのである。病気になったり、怪我をしたり、ニートだったり……。シンプルだからこそ、現代でも有効である。笑える小説ではあるけど、意味を考えるほど恐ろしくなってくる。本当に、人間は、恐ろしい。
で、主人公は「グレーゴル・ザムザ」だったんだ。「グレゴール・ザムザ」だと思っていた。と、読んでいる時から誰かが書いていたなと思い出したら、吉野朔実だった(『お母さんは「赤毛のアン」が大好き』「わたしのザムザ」)。すっきり。
それにしても気持ち悪い小説だった。食事前、寝る前は読まないようにした。今後、読み返す事はあるのだろうか。
- 作者: フランツカフカ,Franz Kafka,池内紀
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2006/03/01
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