坪内祐三『文学を探せ』読了。「週刊現世」創刊2号で向井さんがオススメしていたので読もうと思ったのだが、品切れだった。たかが4年間だぞ。だったら文庫にしてくれ。というか、坪内祐三って長い論文以外は文庫になっていないが、そういう方針なのかな。結局、HZさんに借りた。
話が脱線する事があって、ちょっと散漫になっていた気もしたが、全体は緊張感のある文章だった。「文学」という大きく深いテーマなだけに、著者も力入ってた、気がする。テーマ以外にもヤスケンとの喧嘩(?)、父親の逮捕騒動、ヤクザ風の男に殴られて手術など、「坪内祐三」という人間を感じる話もあった。が、向井さんは《一番坪内さんを遠く感じる、だからいい》と書いていた。うーむ、なるほど。
面白い、というより刺激的だった。特に書評について書かれた二回は。《人は、書評という文学行為を、けっして甘く見てはいけない》という結びの文が深い。
『群像』連載時の最終回、三島由紀夫の「天人五衰」の最後が「……」だった意味からこう続く。
なるほど、私たちは、「……」のように、「言葉」のリアリティを失った「寒い」時代を生きている。しかし、そういう「寒い」時代の中で、「剣」で腹を切って勝手にあの世に行ってしまった三島由紀夫と違って、私たちは、私たちの「言葉」のリアリティを表現しなくてはいけない。「文学」を探し求めていかなければならない。そのためにこそ、まだ、文芸誌は、存在しなければならない。
「言葉」と「文学」についての見事な考察だと思った(何を偉そうに……)。俺も、坪内祐三の中で、かなり好きな本かも。
- 作者: 坪内祐三
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/09/01
- メディア: 単行本
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