不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

血と悲鳴と携帯と悪夢と


 悪夢探偵を見に行く。原作・製作・監督・脚本・撮影・美術・編集・出演、塚本晋也(やり過ぎじゃねぇか?)。出演、松田龍平、hitomi、安藤政信大杉漣、ちょい役で原田芳雄も。塚本作品は劇場で見るのは初めてだ。というか、見た事あるのは『BULLET BALLET』と『双生児』だけだ。
 いきなり書くと、すっごい映画だった。一言で表現すれば「ぐちゃぐちゃ」。感想を書きにくい、というか言葉にしにくい。
 夢の中で“何か”が起こって殺される(自殺する)という事件が起きたので、夢の中に入る事ができる男が侵入して解決する、という話。「悪夢」という単語から『エルム街の悪夢』を思い出す。夢という素材を使うと、似てしまうんだろう。パンフレットで塩田時敏という映画評論家も『エルム街』の名前を出しているが、彼は《そんなに底の浅いものではない》と書いている。それはちょっと浅はかな断じ方じゃないかなぁ。
 hitomiは演技初めてというのもあって、思った以上に存在感はあったけど、やはり演技力不足。セリフが棒読み気味なのはいいけど(本当はよくない)、語尾がかすれながら少し伸ばすのが気になった。文字にすると、
「事件は(ぁ)、解決しました(ぁ)。報告書は(ぁ)、後で提出します(ぅ)」
 それが気になってしまった。脇役ならいいけど、主役の一人だとやや力不足。
 『御法度』でデビューした時は、どこがいいんだかわからなかった松田龍平が事件解決に後ろ向きな、やる気ない、暗い、自殺癖のある、鬱陶しい役をよく演じている。いい役者になったなぁ。この人は映画俳優だ。
 何が起こって、何がどうして、何が解決で、何で終わるのか。全くわからん。わからんというか、はっきりしない。見ているうちに、夢と現実、外と内の境界線が曖昧になっていく。そういう映画はたくさんあるけど、この映画は特に「ぐちゃぐちゃ」だった。えぐい話やグロい描写が少しある事や、細かいシーンの繋ぎ合わせ、オーバーラップなどの演出がある、という意味も込めて。
 トラウマや心の空洞、我々が生きていく内に、どこかに“置き去り”にした記憶。そういったものを「悪夢」と呼ぶのなら、確かにそうなのかもしれない。だが、“それ”らを通って今があるのなら、「悪」というのは少々違う気がする……。
 やっぱり言葉にしにく映画だ。面白いけど分かりにくいし、万人に受けるタイプじゃない。俺も他人にはオススメしない。だけど、面白かった。でも、二度と見ないかもしれない。しかし、次作ができたら見に行く。*1不思議な映画だった。
 エンディング曲はフジファブリック“蒼い鳥”。映画に合わせて作っただけあり、「悪夢」を完全に表現していた。気持ち悪くていい。
《可能なら深い海の中から鼻歌奏でて
 可能ならさらけてしまえたらいい
 蒼さに足どめをされている》

蒼い鳥

蒼い鳥

*1:シリーズ化されるらしい。