NHK「喜劇王チャップリン・世紀を超える」の後半部分、『独裁者』のところだけ見た。前に『独裁者』を見た時、確か手書きの日記に感想を書いたような……と探したらあっさり見つかった。2001年の12月に同じくNHKで放映されていたのを見ている。
『モダンタイムス』 から4年、トーキー否定派のチャップリンが初めて言葉を使った映画こそが『独裁者』だった。それまで作り上げてきた、山高帽・ステッキ・ドタ靴の「チャーリー」というキャラクターを捨て、「私は皇帝になりたくない」と映画史上、最も美しい演説を始める。当時の感想。
映画史に残る名“大演説”シーン。1940年にこれを世界に向けて言えるのだから凄い。その内容はあまりにも純粋にして理想である。60年以上、時が経ったが、チャップリンの叫びは今もまだ響いている。我々はいつになったら理想にたどり着けるのだろうか。人類は自ら破滅の道に進むほど、愚かではないはずだ。
今日見たのはドキュメンタリーだったけど、5年前と同じような思いを抱いた。
番組の中で誰かが言っていたように、最後の演説の言葉は左翼から見れば感傷的過ぎるし、右翼から見れば共産主義のプロパガンダかもしれない。だけど、あの頃にヒトラーを風刺し、誰もが物事を善と悪にわけ、国家というものが何よりも強く存在していた時代に、これだけ純粋で、“真っ当な”思いをはっきり表明できた人間がいただろうか。
そしてこの現代でも、この演説は有効である。実は、それは喜ばしくないことなんじゃないか。だって、それはつまり60年前と変わっていないということだ。当時より表面では見えないけど、もっと深刻な事態になっている気がする。
上記の感想を書いてからの5年間でいろいろ知ったし学んだ。理想は理想であり、あまりにも楽観的だ。
だけど、だからこそ、そこを目指さないといけないんじゃないか、とも思う。
チャップリンが生きていたら9・11以降の世界をどう見ただろう。ふと、そんなことを思った。
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