不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

cinema

「90年代のミニシアター系映画を見ていくのもよい」というのは90年代ゾンビの戯言か

あまり映画を見ない人から、「どれから見たらいいのか教えてください」と言われ、あれこれ好みや傾向を聞きつつ話していたら、いつの間にかスタンリー・キューブリック作品を激推ししていた、特に『シャイニング』、フェイバリットというわけでもないのに何…

クリード 炎の宿敵/俺の名字を言ってみろ

ヴィクター(フローリアン・ムンテアヌ)はあれだけの実力があるなら普通にボクサーとして頭角を現すだろうから、だったら姓を隠して戦い続け、ついにたどり着いたタイトルマッチで履いてきたボクサーパンツに記された「DRAGO」の文字と側にいる男イワン(ド…

ジャコメッティ 最後の肖像/先生、〆切です

矢内原伊作『ジャコメッティ』にもあるように(ジェイムズ・ロード『ジャコメッティの肖像』は未読)、同じ顔を何度も描き直し描き続ける芸術家にとっての「完成」とはどこにあるのか、という本質的な問いかけにもかかわらず、あっけらかんと外してくる肩透…

スター・ウォーズ/最後のジェダイ―終わりから歴史は始まる

ある星の白い地表をえぐった下の土が赤く、何故かわざわざ一人にそれを舐めさせて「塩だ」と言わせてから、白を赤く染めていく、ピークではないが明らかな物語のクライマックスがすばらしい。それにしても、前作で駄々っ子中二病だったカイロ・レンは、今作…

殺人者の記憶法/声が俺の記憶になる

原作既読。あの散文詩のような小説をどう映像にするのかと半分心配しながら見に来たら、これは見事な映画化。中盤までは忘れる事の切なさを描く原作通りなのだが、そこから殺人鬼vs殺人鬼というオリジナルのエンターテイメントに仕上げている。ここで評価が…

バーフバリ 王の凱旋/三本の矢を射る男

2018年最初に見た映画は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』なのだが、先にこちらの感想を書くのをお許しいただきたい。さらに、先に書こうとしておきながら感想にならない感想になりそうなのも先に謝罪しておく。すんません。 本作は『バーフバリ 伝説誕…

【書き忘れ】Netflixで見た良作映画十選

ドキュメンタリーが多いです。 料理人ガストン・アクリオ 美食を超えたおいしい革命/BUSCANDO A GASTON ジェイク・ザ・スネークの復活/The Resurrection of Jake the Snake チャック・ノリスvs共産主義/Chuck Norris vs Communism ニーナ・シモン 魂の歌…

二〇一七年極私的良作映画十選

ザ・コンサルタント/The Accountant 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う/Demolition T2 トレインスポッティング/T2 Trainspotting 午後8時の訪問者/LA FILLE INCONNUE ジェーン・ドゥの解剖/The Autopsy of Jane Doe ローガン/LOGAN ダンケルク/Da…

オトトキ/アノトキソノトキコノトキ

2016年5月11日からのThe Yellow Monkey再集結後一年間を追ったドキュメンタリー。各メンバーのインタビューはもちろんの事、バックステージ、移動中、スタジオでの様子、そして出身地といってもいい渋谷La.Mamaでの無観客ライヴから構成されている。オープニ…

女神の見えざる手/高く孤独な道を行く

ロビイストの話という以外の情報を得ずに(予告も見なかった)見たのもあって、「えらいもん見たで」という驚きと興奮は今年一。序盤のソクラテスとプラトンのくだりの真相を知っている人ならば仕掛けに気付きそうだが、幸か不幸か(というか単なる勉強不足…

ブレードランナー2049/あの光を夢だと思った

ヴィルヌーヴの作品は物語が遅く、見ている者が先回りしてしまうところを、後からゆっくり追いつたり、いつの間にか追い抜いて見果てぬ地平にいたり、不意に背中を押していったりするのだが、今作でもその筆致は健在で、見ている最中や見た直後よりも、見終…

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ/何かあったらこの名を呼べよ

廃車置場で錆びきったはみ出し者の伝説の始まり。日本産アニメのリアレンジとしておもしろいし、なかなかうまいけど、何だかもったりした映像だなぁ、まぁこんなもんかなと見ていたが、ラスト20分からそのもったりをガソリンにした、決して洗練されていない…

パワーレンジャー/アフタースクール・クラブ

「はみだし者達の遠い夏の伝説が廃車置場で錆びついてらあ」なんて歌詞が頭に浮かぶ、TOO MUCHとは言わないまでも、「普通」から外れてしまったPAINを抱える、違う色の違う個性の者達による、採石場から始まる土曜日の伝説。 もっとこうして欲しいとか、クラ…

ジーサンズ はじめての強盗/俺たちにも明日はある

原題「GOING IN STYLE」なのにこんな邦題なのかよ、と愚痴一つくらいはやはり書いておかねばならないとして、しかし邦題のひどさでスルーしてしまうには勿体無い一品(の感想をいまさら書くのも申し訳ないのだが)。 弱者(老人、有色人種)から強者(白人と…

20センチュリー・ウーマン/時間は待ってくれない

自らのセンスと感覚を信頼して生きているけど、それはイコールあなたのセンスと感覚も信頼している事でもあって、自分と相手の理解と乖離の狭間にあるものが個性なのだし、それを縁(よすが)にして繋がっていくしかないのだろう。教えて欲しいのは誰かの思…

ブラッド・ファーザー/セラピーに通え

監督作のつゆ払いというと作品に失礼だが、復活後の俳優としてのメル・ギブソンは追っておきたくてはせ参じた。血の滾りより血の轍を描く事に焦点を置き、現在のアメリカをまるごと反映させた物語で、そういう意味では『ローガン』以上に「アメリカ」の映画…

ハクソー・リッジ/ぼくのたいせつなもの

エドモンドの、信仰とは言いつつも手前勝手すぎる信念とその頑なさにイラつきさえ覚えるが、現実を飛び越えた彼の「正しさ」と、戦場という狂気で塗り替えた現実とが重ね合わさり、そこで聞こえた神の「沈黙」と誰かの声は、ある意味で彼を救ったのだろう。…

パトリオット・デイ/ゴールが見えないマラソン

事件(テロ)をあっさりと狂人たちによるものだと矮小化させて、薄っぺらい善悪問答をさせた上にその回答が「愛だろ、愛」で鼻白む事この上ないが、振り返ってみれば(劇中の順序は逆だが)、犯人の妻への尋問を善悪問答の極北に据え(「あなたに人権はない…

LOGAN/俺の爪痕を越えて行け

過去と正しい事と善き事によって心身共に引き裂かれたとしても、それを受け入れる事でしか俺たちの昨日が誰かの明日にはならず、血に塗られた爪が泣いているように見えてしまう、これほど哀切極まりないアクション映画はそれほどないだろう。多様な人種と共…

マンチェスター・バイ・ザ・シー/人が海に戻ろうと流すのが涙なら

皆が許して罪を問わないけれど、俺だけは俺を許さず罰を与えよう。そうでしか俺は俺を許せない。あの殺風景な部屋は独房に他ならない。そうして擬似親子が補完しあって支え合うというよりも、どうやって俺達は日常や生活に戻っていけるのだろうと血の轍を共…

メッセージ/明日の君を昨日知る

原作未読。昨日と明日の垣根を溶かした今日と自我を永遠へと流し込む。物語が遅い自身の筆致を熟知したヴィルヌーヴの職人芸が見事に冴え渡っていた。だが一方で、「future」という言葉が出てくるあたり、時間=生きるという我々の概念からはやはり飛べない…

パーソナル・ショッパー/君を見ている

見えない「そこにある/ここにいる何か」に恐怖、興味、共感、親近感を抱く形で世界の輪郭をなぞったり、本質を射抜いたりするあたり、本作はオカルトやスピリチュアルではなく、ホラーと呼ぶのが正しいのだろう。何がわかって、何がわからないのか、何を感…

ジェーン・ドウの解剖/いつどこのだれであろうとも

傑作『トロール・ハンター』はまぐれではない、ここでもなお孤高の志を貫き通した作品が産み落とされた。凡庸なホラーにありがちな単なる血みどろ大騒ぎではなく、人間のドラマとして腰を落ち着かせながら、遠いところへ連れて行く密室劇。一般には忌避され…

カフェ・ソサエティ/夢は夢だと夢が言う

ウディ・アレン流の『ラ・ラ・ランド』とつい言ってしまいたくなる、ハリウッドを巡る夢と現の物語。だけど、きらめく星を掴めなかった美しき諦観よりも、バラ色の日々を追いかけていた輝ける時間を懐かしむような面持ちで、これでもかと出てくる名監督名俳…

スウィート17モンスター/青春という一人相撲

外部にいる敵をサーチ&デストロイするのではなく、自らの内にいるモンスターへのスタン ド&ファイトが肝要だという姿勢とそれへの気づきが成長で、彼女の周りにスクールカーストも無神経な大人も子供もいないのは、みなその戦いの真っただ中だからであろう。…

ノー・エスケープ 自由への国境/隣の犬が吠え続ける

メキシコからアメリカへの不法入国の話なので、トランプ云々言われそうだが、しかしアメリカとメキシコの国境線における問題は長年ずっと続いているのだから一朝一夕の話ではないはずだ。一体、フェンス一つでこっちと向こうの何が変わるというのか。人間の…

午後8時の訪問者/私のドアを叩くのは

たとえば中盤にある車の助手席から横顔を映し続けた長回し、あるいは終盤のボタンをめぐる病院内の一連の出来事を映した同じく長回し、これらはサスペンスという言葉では足りない暴力の発露であると同時に、それに相反するようなある種の日常性が共存してい…

イップ・マン 継承/あなたの音が聞きたくて

これまで『イップ・マン 葉問』しか見た事がなく、シリーズにもドニー・イェンにも格段の思い入れがあるわけではない私ですが、見終わった後で「おまえ、もう、なんちゅう、なんちゅうもんを見せてくれるんや……」とたまらない気分になってしまった。 アクシ…

T2 トレインスポッティング/敗れちまったあの日のために

初めて『トレインスポッティング』を見た時、「NO FUTURE」をおでこに貼りつけて、それでも未来にほんの少し手を伸ばしながら今を駆け抜けて行くイギリスの尖がった連中を見てゲラゲラ笑い、しかしどこか憧憬の念を抱いていたわけだが、あれから20年後の彼ら…

はじまりへの旅/ノームおじさんも困り顔

予告からイメージしていたのはファニーなナチュラリストによる、ドタバタ文化衝突劇だったのだが、あにはからんや頭でっかちなチョムスキー狂いのリベラリストによる思想実践反乱劇とは思わず、おかしさもファニーではなくストレンジの方だし、それもいつし…