不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

The Yellow Monkey『9999』/ハローハロー今の君

【メーカー特典あり】9999 (初回生産限定盤)<CD+DVD>(特典DVD付)

 前作『8』から19年(!)、再集結からだってすでに3年、待望のとしか言いようのないザ・イエローモンキーのニューアルバム『9999』である。ある意味で気軽に気楽に気ままに、されど気合入れた気迫こもった一枚は、俺の大のお気に入りとなった。発売日に一聴した時はトータル55分、わりと手堅くまとめてきたな、少し地味かもなとすら思っていたのに、それからほぼ毎日二回くらい聞いている、聞き続けている、聞けば聞くほどよい、スルメだ、脱帽、まいった、これほどとは。

 音で言えば『FOUR SEASONS』の後、『SICKS』の方向へ行かなかったらここにたどり着いたのではないか、というもう一つの可能性を感じさせる、間違いないThe Yellow Monkeyの音。戻ってきたのではなく、違った道を遠回りしてたどり着いただけに、力強い。決して斬新ではないが、再集結後に出してきたシングルは立ち位置の確認であると同時に、いまの時代に一歩一歩足跡をつけてきた証であり、一曲ずつが自信になっていったのだろう。これまでやってきた事、いまできる事、いまやりたい事を凝縮させており、アルバム内で唯一音の空気が違う”ロザーナ”の過去と現在と未来を全て含んだ、《ドアを開けたら見たような見たことない景色が/キレイな色で塗り直されて見えた》という一節そのままのように思えた。

 16年ぶりに帰ってきたら世の中は変わっていて、音楽はデジタル配信中心で、そうでなくともフィジカルは売れない、ロックは時代遅れでバンドは古いと言われる現在、おいおい、えらいタイミングで帰ってきたな。いや、でも俺の知っているThe Yellow Monkeyはもともとそういうバンドだった、その事は以前書いた。もはやアルバムという形は形骸化し、曲順もリスナーの好きに変えられる中で、あくまでアルバムにこだわり、曲順も考えぬく、キンキラキンで花柄の格好をして、大仰でダイナミックで、でも寄りそうようなロックンロール。時代を気にしないわけじゃない、気にするし考えていくけれど、《どんなに世の中が変わろうとも/オレたちが生きている限り/オレたちが愛してきたものを/君に届ける》(TOWER RECORDSのポスターより)、「好きな事を勝手にやる」独善的なものではなく(音楽に限らずアーティストはそれでもいいんだけど)、「君に届ける」と言ってくれる。俺もきっとそうしてくれると信じていたしその通りだった。

 先日、イエローモンキー好きの友人と新譜についてああだこうだと話した。彼はいい意味で面倒な音楽好きで、素直に褒めなかったりする事があるんだけど、このアルバムについては「いいよね」「このアルバムばっかり聞いている」と笑顔で言って、俺も「毎日聞いているよ」と言った。お互い共通のフェイバリット・バンドの新譜の話がまたできる事が、さらにその新譜がよい事が嬉しくて仕方がないし、さらにさらにそのアルバムのツアーにも行けるのだ。幸せ以外に何が言える。

 吉井和哉は「アルバムの最後が自分のいま一番言いたい事だ」と以前インタビューか何かで言っていた。そうなると、本作の最後は”I don't know”で、最後の一節は《忘れない》だ。アンタらは死んでも忘れないだろうし、こっちも死ぬまで忘れるわけねぇだろ。これから先も聞いていく、何度も言っているけど、愛してる。