不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

山田の引退

 飯塚高史は結局、引退試合でもウガーウガーと暴れ回って終わったそうで、引退試合の前でも後でも自身の引退に一言もコメントを出さずに去っていったレスラーは初めてではなかろうか、物語が続きそうな気配はあるものの、お疲れさま。

 飯塚の引退からそう間もない本日、あの獣神サンダー・ライガーが来年一月の東京ドームで引退する事を発表した。これはジュニアの象徴がリングを去るという意味でも、平成元年にデビューし、平成の終わり(まぁ来年はすでに平成ではないのだが)と共に去っていくという意味でも、正真正銘の一時代の終焉である事は間違いない。考えてみればライガー(というか山田恵一)は闘魂三銃士と同じ世代。橋本真也は急逝、蝶野正洋セミリタイア、武藤敬司こそ一応現役だがもうムーンサルトはできない身体だ。三銃士の中で早くに膝を壊して、引退するなら一番早いのではないかと思われた武藤が一番長く続けているのだから、人生わからん。ライガーだってマスクとタイツでわからないけれど、確実に歳を喰い、衰え、限界を超えたのだろう、本人も今日の会見で「もう伸びしろがない」と言っていた、プロレスに一本気なライガーらしいと言えば、ライガーらしい。

 いまマスクとタイツで衰えがわからないと書いたけど、振り返ってみればライガーのコンディションはいつも整っていた、大きな、致命的な怪我をした事はなかったのではないか。だから、常にリングにいた、そこにいた、ライガーがいる、そこに安心感を覚えたプロレスファンは多いはずだ、俺もその一人だ。とにかく存在感があった。もともとアニメから派生したキャラだったのに、いつの間にかレスラーの方がメインになってしまった、アニメを覚えている人の方が少ないのでは、キワモノになってもおかしくないのに、プロレスへの思いにより受け入れられ、誰もあのコスチュームに疑問を持たなくなった。それがプロレスファンだけでなく、一般の方々ですらもそうなのだから、凄い事である。ここまでお茶の間に浸透したレスラーはあまりいないはず。いまなら棚橋がもうそういう存在になっているか。

 リングの上でどのような事をしてきたかは、俺が書くまでもないだろう、各自検索でもしてください。この後、レスラーとしての総括めいた記事はいくらでも書かれるだろうし、動画で試合も見られるはずだ。とにかく80年代後半からプロレスを見始め、90年代にもっとも熱中した世代としては、(好き嫌いはあるとしても)ライガーは最大級の偉大なレスラーだと言ってもよいはずだ。それは新日にとってもそうだろうし、その証拠に10カ月の引退ツアー、そのゴールの引退試合の舞台としてアントニオ猪木以来の東京ドームを用意したのだ。最大級の見送りだろう。ちなみに長州力もやっているけど、「復帰しているもん」と除外したのは当のライガーである。復帰は絶対にしない、という本気度合いもライガーらしい。

 まだいくらでも書ける、何せライガーの三十年はそのまま俺のプロレス観戦歴になる。小橋と同じ、というよりも四天王や三銃士世代のレスラーはみんな俺にとってそうなのだ。そしてそういったレスラーたちがリングから去っていく、そういう時期に来ている。平成が終わる、一時代が終わる、俺の「90年代」が本当に終わっていく、俺の青春が終わっていく、これからもプロレスは見続けていくにしても「俺のプロレス」も終わっていくのかもしれない、まぁ、それでいいのかもな。