深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)。やー、おもしろかった。戦争と差別がある(あった、いやまだそこにある)生活を細やかに書き込んだディテールによって根底をしっかり支え、それぞれ違った過去を抱えた者たちに容赦なく追ってくる絶望に声を失いながらも、問われる私たちの行き先を探る。『戦場のコックたち』ではまだ硬さが感じられたが、本書は文章が伸びやかで、 構成もよく練られている。終盤ページをめくって、「ああっ!」と声が出るほど。ただ、もうちょっと刈り込んで短くしてもよかった気もするし、ミステリーとしては些か謎、疑問が残るところもあった。例えば彼の動機とか、心の動きとか。しかし、戦争をこういう視点とスケールで描けるのか、しかもおもしろく、と感心したのも確か。容赦のないビターな作品だった。最後に余談だが、参考文献があったって読後感は変わらないよね。*1
- 作者: 深緑野分
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/09/26
- メディア: 単行本
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- 作者: 町屋良平
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2018/07/18
- メディア: 単行本
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